ウミガメの繁殖活動(卵~仔ガメ脱出)

ウミガメの卵

ウミガメは1回の産卵で120個程度の卵を産み落としますが、1シーズンで何回目の産卵かによっても卵数は異なるような印象で卵の個数にはかなりバラツキがあります。

ピンポン玉のような形状をしており、大きさはアカウミガメで40mm前後、アオウミガメは一回り大きいです。

 

 

アカウミガメの産卵巣
アカウミガメの産卵巣
ウミガメの卵
ウミガメの卵
アカウミガメの産卵
アカウミガメの産卵

※卵を掘り起こして捕獲・調査するには採捕許可が必要です。写真は採捕許可を受けて行った調査のものです。

胚の発生

産卵された卵は砂のなかで胚が発生します。

胚の発生が始まると卵の中で卵殻にくっついて向きをかえられなくなるため卵の天地を変えると死んでしまいます。また冠水すると著しく孵化率が低下します。

発生のある段階の温度に雌雄が決まります。これは一部の爬虫類で見られる性決定の仕方で「温度依存性決定」と言います。

卵の産む位置により台風などの高波時に、冠水したり、砂浜の浸食により流されてしまう場合もい多いです。

 

発生中の胚(死体)
発生中の胚(死体)
発生途中の胚(死体)
発生途中の胚(死体)
冠水した卵
冠水した卵

※卵を掘り起こして捕獲・調査するには採捕許可が必要です。写真は採捕許可を受けて行った調査のものです。

孵化

産み落とされてから約2ヶ月で孵化した子ガメが地上に這い上がってき、海に向かって行きます。

海に向かうアカウミガメ
海に向かうアカウミガメ
アカウミガメ 子ガメ
アカウミガメ 子ガメ
アオウミガメ 子ガメ
アオウミガメ 子ガメ

・孵化率

孵化率調査①
孵化率調査①
96%が孵化し脱出したと想われる
孵化率調査②
孵化率調査②
ピップ(卵殻が割れる)前、ピップ後、孵化後など様々な段階のものがある
孵化率調査③
孵化率調査③
ほとんどがピップ前の状態

産卵してから脱出するまでは、砂の温度や水分環境、波など様々な要因が孵化率に影響します。

健全な場合95%以上孵化し脱出する場合もありますし、全滅する場合もあります。

 

もちろん、産卵する場所によっては高波や捕食などの自然現象により死亡してしまい自然の摂理だと思いますが、近年は護岸や人工物の影響により孵化条件の悪い環境でしか産卵できないという海浜も見受けられます。

 

脱出後数日経過した産卵巣の卵の状況をみると孵化率が分かります。

また、多数の卵が発生の同じ時期で死んでいる場合は、その時期に冠水など死に至る事象が起こったことが推測できたりします。

 

孵化率は温度と台風等により海水をかぶったかどうかが大きく影響しているように思います。

時期はずれに産んだものや大きな台風の影響を受けた場所では孵化率が著しく低くなることが多いです。

シーズン中に海岸線から離れた草本帯で産卵したもの等の孵化率が高いことが多いです。

 

仔ガメの脱出

脱出直前の様子

子ガメはピップ(卵の殻を割ること)し卵からでた状態で数日間砂中にいてその間に次々と他の子ガメも卵を割ります。

卵が割れると、卵中の羊水や老廃物、水分が漏れ重力により砂の中に浸透していくため卵室内には空間ができます。空間ができると子ガメが動くと上部の砂が少し陥没するので、砂浜の表面が凹みます。

卵の位置を把握しておけば、この表砂の変化より子ガメの脱出のタイミングを予想できます。

 

〔写真-脱出直前の砂浜表面の陥没状況(沖縄島)〕



脱出前(顔だし待機)

砂の温度が低くなると子ガメが顔を出します。

始めに1個体が顔を出した状態で待機し、下から他の子ガメが這い上がってきて数十個体同時に海を目指します。

顔をだしてから、地上に脱出するまでは数時間かかることもあり、写真の脱出観察をした時も3時間以上待ちました。

 

〔写真‐顔をだしたアオウミガメ(沖縄島)〕



地上への脱出

ある程度の個体数が揃うと一斉に地上に脱出してきて海に向かって進んでいきます。

100以上の子ガメが、30~40個体ずつ3,4回に分けてでてきます。

 

〔動画-アオウミガメ脱出の様子(沖縄島本部町)〕



海を目指して

地上に這い上がった子ガメは光に向かう習性(走光性)を持ち、わずかな光をたよりに海の方向を感知します。

ですので、ライトを照らすと方向を見失い迷走することがあります。

海岸の人工的な明かりや見物者の懐中電灯の光などで迷走し、翌朝になっても海に辿り着けなかった事例もあるようです。

 

〔写真-海に向かうアカウミガメ(屋久島)〕



海へ

子ガメの足跡も残ります。

産卵巣の付近は多くのカメの足跡が重なっています。

子ガメの足跡は親ガメの足跡より浅いためすぐに消えてしまいますので観察したいなら脱出した翌日などに観察するのがよいでしょう。

 

〔写真-アカウミガメの足跡痕跡(沖永良部島)〕


卵や子ガメを食べる者たち
砂に頭を突っ込み卵を食すアカマタ(久米島)
砂に頭を突っ込み卵を食すアカマタ(久米島)
オカヤドカリに食されたアカウミガメ(久米島)
オカヤドカリに食されたアカウミガメ(久米島)

ウミガメが卵から孵化し海にでて大人になるまでは長い道のりで、途中で食べられてしまう場合も多いです。

夜の砂浜を歩いているとアカマタというヘビが徘徊してウミガメの卵や子ガメを狙っています。

孵化して海に向かう際はオカヤドカリや鳥類など沢山の敵から逃れた子ガメだけが生き延びることができます。