サンゴに関しての解説ページです。
色々な形や模様を作り鮮やかに海を彩る不思議な生き物について触れてみましょう。
目次
サンゴがどんな生き物なのか生態や形態、用語について解説しています。教科書的な解説です。
フィールドでサンゴの観察する際の着目点などを紹介しています。
簡単な図鑑的な内容でツアーで観察できるサンゴを紹介しています。
観察したサンゴを調べる際に役立つ情報を紹介しています。
・サンゴはイソギンチャクやクラゲの仲間で硬い骨格をつくる生き物
サンゴとはイソギンチャクやクラゲと同じ刺胞動物に分類される硬い骨格を作る生き物の総称。
サンゴにも色々な種類があり、宝石サンゴと呼ばれる深い海に生息するサンゴ等もありますが、多くの方がイメージするのはイシサンゴの仲間で、その骨格がサンゴ礁を作っていきます。サンゴ礁を作るサンゴを造礁サンゴといいます。
サンゴといえばテーブル状や枝状の硬い石のようなものが連想されますが、それはサンゴが作った骨格で、触手をもったポリプという構造のイソギンチャクのような生き物です。沢山のポリプが骨格を共有して様々な形になっています。
多くのサンゴは昼間はポリプを閉じて硬い石のように見えますが、よく見るとポリプを開いているものもあります。
・触手を持ったイソギンチャクのようなポリプという形態
・多くのサンゴは光合成を行う褐虫藻と共生している。
【ポリプの構造】
①触手
餌をとったり、光を多く集めるため伸び縮みする
②口
肛門がないため、食事も排泄も卵や精子の放出もすべてここから行う。
③褐虫藻
サンゴが体内で共生している単細胞の藻類。
光合成を行い栄養をサンゴに提供する。
【褐虫藻との共生】
褐虫藻は「サンゴの体内に住まわせてもらう代わりにサンゴに光合成で得た栄養を供給する」という共生関係にあります。
褐虫藻と共生するサンゴを有藻性サンゴといい、ツアー中観察できるサンゴの多くが有藻性サンゴです。
外見上見えるサンゴの色は褐虫藻の色で、褐虫藻がいなくなった状態を白化といいます。
・多くのサンゴは沢山のクローン個体から成る群体である。
多くのサンゴは、1個体で枝状やテーブル状のサンゴになるのではなく、「群体」とよばれる沢山のサンゴ個体の集合体です。
分裂や出芽によって沢山のクローン個体を作ってそのクローン個体が連なって骨格を形成していき枝状やテーブル状などの形になっていきます。
一つのポリプからできる「単体サンゴ」もあります。
サンゴの増え方は有性生殖と無性生殖がある
サンゴが増えていくには2通りの方法があります。
・有性生殖
産卵によって卵ができ新しい場所に固着する。
精子と卵子が入ったカプセルを放出する「放卵放精型」と幼生まで育てて放出する「幼生保育型」がある
・無性生殖
無性生殖には2パターンある。
①サンゴ個体が出芽や分裂によってクローンを作って群体を成長させる。
②枝状サンゴなどで多い、波などで折れた枝が固着し新しい群体を形成する場合もあります。
幻の道トレッキングでは無人島の波当たりのよい浅瀬に折れた枝から成長した枝状サンゴの群落が観察できます。
・白化現象とはサンゴの体内から褐虫藻がいなくなりサンゴの骨格の色が透けている状態
・褐虫藻は高水温などの外的ストレスによってサンゴ体内から離れる
・褐虫藻がいなくなるとサンゴは栄養不足になり、長く続くと死滅する。
サンゴの多くは褐虫藻という単細胞の藻類と共生し、体内に住まわせることで褐虫藻が光合成により得た栄養の一部がサンゴに供給されます。
白化減少とは褐虫藻がサンゴの体内からいなくなり、サンゴの白い骨格の色が見える現象です。
上図のように
・健全な状態
高水温などの外的なストレスを受けると体内から褐虫藻を吐き出します。
↓
・褐虫藻が離れたサンゴ
褐虫藻が離れるとサンゴの骨格の色が透けてきます。この時、鮮やかな蛍光色になるものが多く白化前は外見上すごく綺麗に見えます。
↓
・白化
褐虫藻が離れると栄養不足になり徐々に弱り白くなります。この時はまだサンゴは死滅していないため、外的ストレスが軽減され褐虫藻が戻ると再び健全なサンゴに回復する場合もあるそうです。
↓
・藻の生えたサンゴ
白化後、死滅したサンゴの骨格にはやがて藻が生えます。
死滅したサンゴの骨格はサンゴ礁を作る材料になります。この骨格の上に新たなサンゴの種がつき成長していくことでサンゴ礁が高まっていきます。
従って、サンゴが死滅し次世代が成長していくという過程はサンゴ礁の造礁にとっては必要なことで、更新を経てサンゴ礁が形成され、世代交代を繰り返すことで環境の変化に適応していくという側面もあります。
数年~数十年に一度は大規模な白化減少が起こり多くのサンゴが死滅すると考えられています。長い歴史の中でそれを繰り返して造礁してきましたが、近年は地球温暖化などの影響で白化減少の起こる頻度が高くなり、サンゴの環境適応が追い付かずサンゴやサンゴ礁の衰退が危惧されています。
大規模な白化現象が起きた2016年の状況
様々な形のサンゴがあり、どのタイプのサンゴなのか観察してみましょう
サンゴ群体は様々な形状をしています。
太陽光を集めやすい形、波に強い形、逆に波を使って分布を広げる形···など様々です。
海中は深度や波あたりなど環境も一様ではありませんので、それぞれの環境で適した形状のサンゴが生息しています。
ツアーで観察するフィールドも場所によって観察できるサンゴの形状が異なりますので、どこでどんなサンゴが観察できるか意識してみると面白いです。
(以下、一枚目の画像掲載順に)
枝状
いわゆるエダサンゴ、波により折れた枝が再び地盤に固着し新たな群体を形成する無性生殖を行う場合があり、タイドプールなどでもまとまった群落を見ることが多い。
コリンボース状
コリンボース状とは横方向に放射状に張り出した枝から上方向に枝が伸びているような形状で散房花状ともいう。礁縁部のかなり浅い場所にも多く大潮の干潮時には海面から露出している場合も多い。
テーブル状
一本の柱のような構造の上に板状に横に広がった形をしている群体。
水深のやや深い礁斜面などに、やや光の弱い環境でも光を受ける面積を広くして生息すると考えられている。
塊状
上方向、横方向に成長し半円球状のような形になる。
穏やかで濁っている場所でも観察できるものが多い。
葉状
薄く平らに横に広がる。キャベツ状やすり鉢状になる場合もある。
礁縁の浅い場所やタイドプールでも観察できる。
被服状
地面を覆うように成長する。様々な場所で観察できる。
自由生活型・非活着
地盤に活着しないタイプのサンゴ。
・どのような場所にどんな形状のサンゴが多いか観察してみると面白い
・どの形状がその環境に適したサンゴなのか考えてみる
陸から礁池と呼ばれる浅海があり、その沖にサンゴの骨格などが堆積して盛り上がった防波堤のような礁嶺があります。
海岸線から礁池、礁嶺のエリアを礁原といい、その外洋側は礁斜面になります。
(一般的なサンゴの分布)
①礁池のサンゴ群落
外洋と切り離された内海で穏やかで濁りやすい環境。また干潮時は高温になる環境。
枝状や塊状のサンゴを主体とする群落が多く、単一種で巨大な群落を形成することが多い。
海水面まで成長したマイクロアトール(後述する)も多い。
②礁縁のサンゴ群落
波が砕ける場所でも生育できる種が多い。被覆上、葉状、塊状、コリンボース状のなど様々なサンゴが観察できる。大潮の干潮時にはサンゴが海面から顔をだす
③礁斜面のサンゴ群落
サンゴ礁の外洋側で深くなっていく場所。深さがあり光を受ける面積が多いテーブル状のサンゴなどが多い
地形や潮の流れなどで観察場所によっては上記とは異なる場合も多く、何故そうなっているのか考えながらフィールド観察をすると面白い。
【ポリプの観察】
・昼間はポリプを閉じているサンゴが多いが、中には開いているものもある
・ポリプの大きさや形は種により異なる
【サンゴ個体の観察】
・サンゴ個体(ポリプを閉じている状態)も色々な形がある
・写真を撮っておくと後で名前を調べたりする時に役立つ
サンゴ個体の形も色々あります。
実際にツアーで観察できるサンゴ群体を例に見ていきましょう。
(一枚目の写真)
枝状のミドリイシ属の群体です。
枝の先端の個体は中軸個体といい、周りの放射個体よりサイズが大きいです。種によっては中軸個体だけ色が異なるものもあります。
個体と個体の間は共骨と呼ばれる骨格部分です。
(二枚目の写真)
キクメイシ属の群体です。
それぞれの個体は口の回りに隔壁という構造があり、きょう壁という仕切りに囲まれていむす。盛り上がった部分のギザギザは鋸歯と言います。
(三枚目の写真)
ナガレサンゴ等迷路のような模様になるサンゴ群体てはサンゴ個体は列状にならび、凹んだ谷と凸の畝が壁になります。
【サンゴ個体の配列の観察】
・サンゴ個体の配列によって様々な模様が観察できる。面白い模様を見つけよう
サンゴはいくつもの個体が集まって群体を形成しますが、サンゴ個体や個体間の壁の形状で様々な模様を作ります。
色や大きさもそれぞれですので、観察していると楽しいです。
(以下、写真掲載順に)
セリオイド型 個体同士が壁を共有
ファセロイド型 個体が壁を共有しない
メアンドロイド型 谷と畝ができる
単体サンゴ 群体を形成せず一つのサンゴ個体から成る
【サンゴの骨格観察】
・ビーチで沢山のサンゴの骨格の断片を観察できる
・手にとってサンゴの骨格をじっくり観察できる。
・ある一定の高さでサンゴ群体の成長が止まる
・輪切りのようなマイクロアトールはまるで人工的に切られたような景観
上方向、横方向に成長していくサンゴは、やがて海水面まで成長し上方向には成長できなくなり横方向にのみ成長を続けます。そのため、上部は骨格のみになり側面が生きている状態になります。
この状態をサンゴ礁にみたててマイクロアトール(「小さなサンゴ礁」という意味)と呼びます。
礁池内やタイドプールなど穏やかな環境に多く、長期間生きていける白化やオニヒトデの食害に強い塊状のハマサンゴや枝状サンゴなどで多く見れます。
(以下、写真掲載順に)
・礁池内のハマサンゴ属の群落
成長した群体はある一定の高さで成長が止まっています
・タイドプールのマイクロアトール
干潮時の海水面付近で輪切りされたようにサンゴの成長が止まります
・2段のマイクロアトール
無人島周辺で観察できるマイクロアトール群。2段構造になっていて上段は過去の海水面、下段は現在の海水面。海水面が下がったことが分かる。
・タイドプールや浅場でも視界一面を覆いつくすような枝状サンゴの群落を見つけれる
・折れた枝が固着して群落を広げていったもので、周辺には折れた枝が散らばっている
枝状のサンゴは折れた枝が再び地盤に固着し成長することで大きな群落を形成します。
多種のサンゴやソフトコーラルが隙間に生息することもあるがほぼ単一種の密度の高い群落になる。
礁池内の浅い場所やタイドプールでも見ることができ成長が早く、去年なかった場所にまとまった群落が広がっていることもしばしば。
群落の周辺には折れた枝が散らばっていて群体の一部は生きているのが分かる。
見つけるポイントとしては、波やうねりの影響を受ける場所を探すこと。
(掲載写真の1,2枚目)
幻の道トレッキングで観察できる無人島周辺のタイドプールの群落
(掲載写真の3,4枚目)
シュノーケリングツアーで観察できるユビエダハマサンゴの巨大群落
枝状ミドリイシ
枝状のサンゴ群体は他のグループのサンゴでも見られますが、ミドリイシの場合は先端の個体(中軸個体)が大きいのが特徴。
ツアーフィールドでも穏やか場所から波当たりのよい場所まで様々な場所で見られ、種類や色相も豊富。
テーブル状のミドリイシ
「テーブルサンゴ」の代表格。
一本の柱のような構造の上に板状に横に広がった形をしている群体。
水深のやや深い礁斜面などに、やや光の弱い環境でも光を受ける面積を広くして生息すると考えられている。
コリンボース状、指状のミドリイシ
コリンボース状とは横方向に放射状に張り出した枝から上方向に枝が伸びているような形状で散房花状ともいう。
[礁縁部]のかなり浅い場所にも多く大潮の干潮時には海面から露出している場合も多い。
種類、色相ともに豊富でピンクや紫、青など様々な色の群体を観察できる。
白化しやすいサンゴのひとつで、海水温が上がると一番始めに白化する。世代交代が頻繁な種であると思われサンゴ礁の基盤となる死骸の骨格供給に大きく寄与するのではないかと思う。ツアー中にも白化している群体や新しく地盤に固着したであろう小さな群体を見ることができる。
造礁のメカニズムやサンゴ礁生態系といった踏み込んだ内容まで考察していきたい方には欠かせない種類のサンゴである。
サザナミサンゴ科のサンゴ
キクメイシ属、タバネサンゴ属、ナガレサンゴ属、ノウサンゴ属などがこのグループに属する
ハチの巣状のキクメイシ、迷路模様のようなナガレサンゴやシナノウサンゴ、脳のような模様のノウサンゴ等模様が面白いものが多く。
背の届く浅い場所でも普通にみれるので、間近でサンゴ群体の模様を観察してみてください。
クサビライシ科のサンゴ
群体を形成せず単体の個体から成るものが多く、岩に固着しない自由生活型や弱く固着する程度のものが多い。
サンゴ群体の隙間を観察していると見つけられる。
キノコの形に似ているのでマッシュルームコーラルとも呼ばれる。
イボハダハナヤサイサンゴ
樹枝状の球状の形状。ミドリイシのように先端に大きな個体はなく
大小様々ないぼ状の突起が並ぶ。紫やピンクなど鮮やかなものが多い。【礁縁部】の波あたりのよい浅瀬で観察できる。
チリメンハナヤサイサンゴ
アザミサンゴ
昼間でもポリプを伸ばしている。攻撃性が強く他のサンゴをスイーパーという触手で攻撃するため他のサンゴ群体と隣接しない。
色相が豊富で、ツアーで行く場所では緑色と薄紅~白色の群体をよく見る
ユビエダハマサンゴ
枝状のハマサンゴ属のサンゴ。
枝が折れ、折れた枝が再固着し群落を広げていくので、単一種で大規模群落を形成する。
群体を形成するサンゴ個体はサイズが小さく表面が滑らかで昼間でもポリプを開いている場合もある。
ハマサンゴ属の塊状サンゴ
環境変化に強く長い年月をかけ巨大な群体を形成する。
上方向への成長が進み、上部は生きていけない浅さまで達して骨格のみになっているマイクロアトール状のものも多い。
群体を形成するサンゴ個体はサイズが小さく表面が滑らかで昼間でもポリプを開いている場合もある。
ハナガササンゴの仲間(?)
昼間でも数cm程の長いポリプを伸ばしているので、波にユラユラ揺れてサンゴだとは思わない方もいるかもしれません。
ソフトコーラル
硬い骨格をもたず細かい骨片を体内にバラバラの状態で持っているものの総称。
柔らかいので水中でユラユラ揺れているのを観察できます。
色相は黄色やピンク、紅色など鮮やかなものが多く、形状はキノコのような形や枝サンゴのような形をしているものまで様々である。
パイオニア(先駆種)の性質を持つと考えられ、サンゴ群落の中の枯損した隙間などに生息している場合があり、まとまった小群落を、作りお花畑のような景観を作る。
葉状サンゴ
被覆状サンゴ
サンゴの正確な分類は難しく骨格を拡大して見ないと分からないものや曖昧なものも多いです。
フィールド観察でも、特徴的なものや、グループを見分けることができる場合もあります。
何よりも、図鑑や資料をみながら、観察したサンゴの特徴などを確認することで理解が数段深まります。
ぜひチャレンジしてみてください。
・フィールド観察では気になったサンゴをスマホ等で撮影しておくとよい
全体写真、群体の形状や色、サンゴ個体の形や配列、観察した環境(タイドプール、波打ち際、水深等)、ポリプ(開いている場合) 等を記録しておくとよい
・似たようなサンゴが多く、同じ種でも色が違ったりするので、できるだけ複数の図鑑や資料を見比べる
観察したサンゴの名前を調べたりする際に役立つWEB上で閲覧できる信頼度の高そうな図鑑の紹介です。
喜界島の有藻性サンゴ類~生きているサンゴを見分けよう~ フィールド図鑑(WEB版)
(リンク先)NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所HP
(リンク先)国立環境研究所HP