生物相とは、「その地域にどのような生物が生息しているか」を表します。

生物相の特徴で分けた区分を生物区と言います。

 

このページでは世界の生物区や琉球列島の生物区について触れています。

世界の生物区

・世界の生物区は6つに分けられる。

・琉球列島は旧大陸北区と旧大陸東洋区の境界を含む列島

 世界の生物相は大きく6つに分けられます。

 6生物区のような大きな骨組みは、遥か数億年に及ぶ大陸移動により成り立ちます。 それぞれが大陸として独立後、長い年月の中で進化し続け、現在に至ります。 基本的に寒い地域では生き物の種類は少なく、暖かい地域では多くなります。

 

それぞれの特徴をザックリと・・・ ・

新大陸北区と旧大陸北区

寒い地域で生物相は貧弱です。また近い過去までベーリング海が陸続きだったため類似点も多く、2つをまとめて「北区」とする5界区の分け方をする場合もあります。

 

 エチオピア区

アフリカ大陸は哺乳類のパラダイスです。 キリンやライオン・・・動物園の人気者達も多く、サバンナを大きな哺乳類が駆けている風景が容易に想像できます。

 

 新大陸熱帯区

南米地域。多様な生物相を持つジャングルを有する地域。

 

 旧大陸東洋区

熱帯アジア地域。 植物相が豊かな熱帯雨林地域。南米の熱帯雨林との大きな違いは、ユーラシア大陸であり隣のエチオピア区や旧大陸北区の影響も強いこと。オランウータンやメガネザル、種々のコウモリ類等などジャングル暮らしの哺乳類が多い!!

 

 オーストラリア区

他のどの区とも異なる生き物が多く、コアラを始めとし、カンガルーなどの有袋類、卵を産むカモノハシなどユニークな哺乳類が多いです。


生物地理的に見た琉球列島

世界の生物区を踏まえた上で、琉球列島を見つめてみましょう。

大陸ごとの生物区をベースに、さらに新生代(新生代の最後が氷河期)の生き物の移動が現在の琉球の生物相を創りました。

ここからが一番お話したいことですが、琉球列島は旧大陸北区と東洋区の境界にあるということです。 境界線状の生き物たちが島という環境で長い歴史を歩んできたのが琉球列島なのです。

動植物は気候の変動等により南北へ移動します。 北と南の境界であるということ、そこが陸続きではなく列島であることが面白い点です。 つまり、ユーラシア大陸の北方と南方系の生き物の境界線状にある 独立した生態系を有する孤島であり、且つ、近隣の島々と密接に影響しあう列島 でもあるのです。 そこには、東洋区でも新大陸北区でもない琉球があります。 狭間の場所で孤島性と列島性を合わせ持つことこそ、琉球列島の奇跡の根源だと考えています。 


琉球列島の生物区

 鹿児島県大隈半島から台湾に及ぶ琉球列島の生物相は大きく3つに分けられる。

 陸続きであれば動植物の移動ができるが海を隔てると分断されそれぞれが独自の生物相を生み出す。古い時代に海峡となったトカラ海峡=渡瀬線(トカラ列島悪石島と子宝島間)とケラマ海峡(沖縄諸島と宮古島間)で生物相が大きく変わり、そこを境に北琉球、中琉球、南琉球に分けられる。特に渡瀬線は世界の生物区分上の旧大陸北区旧大陸東洋区の境界でもあり生物相の違いが顕著である。

 

 

 


・北琉球

ニホンジカの亜種とされるヤクシカ(屋久島西部林道)
ニホンジカの亜種とされるヤクシカ(屋久島西部林道)
北琉球:屋久島を含む渡瀬線より北の地域。生物相は本土に近い、ハブやアダンなど南方系の動植物で分布しないものが多い。また、ニホンザルやニホンジカなど本土と共通哺乳類の南限でもある。

・中琉球

ヤンバルクイナ(沖縄島国頭村)
ヤンバルクイナ(沖縄島国頭村)

渡瀬線以南の奄美群島及び沖縄島と周辺離島。

中琉球は世界的にレアな生物種が多く、他の琉球諸島、台湾、中国、日本本土に近縁種が分布しないものが多い。

アマミノクロウサギ(奄美大島、徳之島)、ヤンバルクイナ(沖縄島)キクザトサワヘビ(久米島)ケナガネズミ(奄美大島、徳之島、沖縄島)リュウキュウヤマガメ(沖縄島、渡嘉敷島、久米島)等多くの中琉球に固有の種が挙げられる。


・南琉球

ニッパヤシ群落(西表島船浦)
ニッパヤシ群落(西表島船浦)

南琉球は琉球のなかでも南方系の色がさらに濃い。

カンムリワシ、ニッパヤシ等熱帯系動植物の分布北限地になっていたり、イリオモテヤマネコ、ヤエヤマヤシ、ヨナグニサンなど固有種化、固有亜種化したものも多い。

気候的にも熱帯と亜熱帯の境界であることに魅力を感じる地域である。


個人的には

 

 北琉球→九州に近い生物相の中に垣間見える南方系動植物がおもしろい。

 中琉球→起源の古いものが多く、個々の生物種のレア度が高い。弧状列島琉球を感じれるフィールド。

 南琉球→個々の生物種もおもしろいが、そのつながりや成り立ちを見るのがおもしろい。自然度の高い西表島は島の生態学を学ぶには絶好のフィールド。

 

と思っています。ぜひ列島という視点で琉球を楽しんでみてください。